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池水雄一の「ゴールドディーリングのすべて3」

インドと韓国のFTA

今週はまたMetals Focusのレポートからインドの近況を紹介します。新しい物品・サービス税の導入によりゴールドの流れにも変化が生じています。

インドでは7月1日にGST(Goods and Services Tax)が導入されました。物品・サービス税ですが、日本の消費税のような付加価値税です。しかし、日本のような一律8%といった仕組みではなく、対象物によって5%、12%、18%、28%の4段階でスタートしました。この新しいGSTが施行されてから、インドでは韓国からのゴールドコインの輸入が急増しています。これはどういうことでしょうか。

7月単月で韓国からのゴールドコインの輸入は7トンにも達し、8月の初旬には7~8トンのコインがインドへ既に韓国から輸出され、後半にも4~5トンが運ばれる予定だということです。7月と8月の2ヶ月の間に20トンものゴールドコインが韓国からインドに送られることになります。ちなみに7月以前、今年前半の輸入量はゼロです。片やインドのゴールド地金の輸入は、7月にはさらに減少し、前月から27%の減少で過去10ヶ月で最低のレベルである48トンとなりました。

このような急激な韓国からのゴールドコイン輸入増加の背景は、このGSTの施行とインドと韓国との間のFTA(Free Trade Agreement)が存在することです。2010年にインドは韓国も含めたASEAN諸国とFTAを結びました。FTAのもとでは、国内の宝飾業者を守るために12.5%の税金をゴールド宝飾品とゴールド製品の輸入にかけていました。しかし、7月以降、税金はGSTに統一され、この宝飾業者を守る税金は無くなりました。その結果、韓国からのゴールドコインの輸入は3%のGSTだけ払えば良いことになりました。これは普通のゴールド地金の輸入にかかる税金が関税の10%とGSTの3%だということを考えると、10%も安くゴールドを輸入できるということになります。コインの輸入業者は、コインを溶かして、それをゴールド地金にして売っても十分な利益が取れるということになるのです。

Metals Focus社によると12社が韓国からゴールドコインを輸入しているとのこと。韓国からのコインの輸入は、インド政府にとっての税収入を減少させるだけではなく、コインを輸入することができない銀行や精錬所とっては、コイン業者の大きなディスカウント販売に対抗することもできるわけがありません。インド政府はこの問題に対して、状況を検討し、来月9月には何らかのレポートを出すと言われています。いくつかの業界団体が政府との話し合いを行っており、何らかの対抗策がもうすぐ打ち出されるのではないかと思われます。

この問題に対する政府の対抗策は、まずセーフガードタックスを設けることでしょう。FTAの締結相手国からのゴールド宝飾品等の輸入に対して12~15%の税関通過税を課しているスリランカが、そのいい例だと言えます。業界関係者の多くは、ゴールドはFTAの対象からそもそも外されるべきものだと考える人間が多いようです。ほぼ通貨としての側面を持つゴールドがいろんな税金の対象になったりならなかったりすると必ずその弊害が起きます。まさに今の日本の消費税によるゴールド密輸問題もその典型ですね。

(インドのゴールドバー輸入量の推移:トン)

20170830-1

 とここまで書いたのですが、ここで最新ニュースが入ってきました。

 先週金曜日(8月25日)に、やはりインド政府はゴールドとシルバー製品の韓国からの輸入を禁止するという通達を出したようです。これにより、税率の差を利用した韓国からのゴールド輸入はとりあえず無くなるでしょう。ただ同じ問題がFTAを結んでいるインドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、日本そしてチリとの間にも起こる可能性があります。既にインドネシアからまとまった量のゴールドがインドに入ってきているという情報もあります。韓国からの大量の低税率のゴールドの輸入により、インドのゴールドのプレミアムは18ドルディスカウントまで下がっていましたが、今週からはおそらくこのディスカウントが大きく改善されるものと思われます。