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池水雄一の「ゴールドディーリングのすべて3」

パラジウムの急騰

パラジウムが急騰しています。9月1日金曜日に940ドルから980ドルまで急騰し、翌4日月曜日には一時999.95ドルと1000ドル一歩手前まで上伸しました。このレベルは2001年3月以来のなんと16年振りの高値になります。

パラジウムが明らかな上昇基調に入ったのが2016年の年初に500ドルを割って底を打った時からです。その時の安値が450ドルだったので、そこからパラジウムは2倍以上の価格になりました。私はもう何年も前からパラジウムはプラチナと同じ価格になる可能性があると、貴金属4 品の中ではいつも最もパラジウムを押して来ました。ここに来てようやくそれが現実化しようとしています。実際にそうなる背景にはやはり確固たる理由があります。

(パラジウム1年)
20170906-1

(パラジウム過去30年の動き)
20170906-2

その最大の理由はずばり「需要と供給」。非常にシンプルです。皆さんは「なんだそんなことか」と思うかもしれません。しかし、パラジウムのような工業用メタルで、地上在庫が乏しい物は、まさにこの需要と供給のバランスが直接相場に響いてくるのです。 パラジウムの鉱山生産と需要のバランスはなんと2007年からマイナス、つまり供給不足状態にあり、2010年以降は地上に存在する在庫も枯渇し始め、2012年からは鉱山生産、地上在庫を含めても需給はマイナス、つまり現物不足がどんどん深まる状態にありました。世の中に必要なパラジウムが存在していない以上、価格が上がるのは火を見るより明らかだったのです。冷静にその数字を見るだけでも、今日の状況は簡単に予測ができたはずです。 一方、プラチナは豊富な地上在庫が存在することに加え、過去10年間で鉱山生産が足りなかったのは2年だけであり、さらに近年の需要の弱さ(宝飾品、ディーゼルエンジンの不調)も手伝って、価格的に大きく上げる可能性はあまり考えられない状況でした。パラジウムは需給要因で上昇するしかない一方、プラチナは上昇しないどころか南アランド安で売り圧力が強いこと考え合わせると、パラジウムがプラチナに鞘寄せして行くことはもはや自明のことだったのです。

(プラチナ・パラジウム比価) 20170906-3

ここに来てパラジウムの騰勢が強まっているのは、いよいよ現物が足りなくなってきていることが背景にあります。今年の6月にはリースレートが急騰しました。一時20~30%というとんでもない数字になり、ほとんどパニック状態になりましたが、現在は7~8%で落ち着いてはいます。 しかし、ゴールドやプラチナのリースレートがほとんどゼロに近い現在の状況で、パラジウムだけが8%も金利(メタルのリースレート)が付いているということは、まさにそれだけ現物の需給が逼迫している何よりもの証拠です。

パラジウムの需要がこんなに伸びているのは、パラジウムのほぼ7割が自動車の排ガス触媒に使われいるという現実があります。今年の自動車の売上は4%増加、世界中でSUVの売上が好調なこと、欧州ではディーゼル車からガソリン車へのシフトが進んでいること(ディーゼル車はプラチナ、ガソリン車はパラジウムを使用)、そして排ガス規制が世界的にどんどん厳しくなっていることが、パラジウムの需要をどんどん増加させているのです。ガソリン車の売上は中国とインドで特に伸びています(中国の場合は小型車に対する減税措置があり、将来の需要を食べてしまっているという指摘もありますが)。 また、パラジウムの用途の約12%を占める電子材の半導体の売上も今年は昨年比20%近く伸びており、パラジウムの需要がこの分野でも増加しています。

また、間接的ではありますが、北朝鮮絡みの地政学リスクでゴールドの価格が1300ドルを超えて上がっていることも、パラジウムにとっては追い風です。貴金属は基本的にゴールドの価格に追従するからです。

そして、今年の8月には米国議会が、米大統領選挙の妨害、人権侵害、クリミア併合、そしてウクライナ東部における軍事活動に対する報復として、ロシアに対する新しい制裁を認めました。パラジウムの最大の生産者はロシアのノルリスク・ニッケル社(Norilsk Nickel)です。まだノルリスクからのパラジウムの供給に対しては規制がかかっていませんが、その心配はマーケットには常に存在しています。また、ノルリスク自身もオーナーの一人が非常にプーチン大統領に近い富豪として有名です。ここには明らかに政治的リスクが存在します。

ノルリスクは今年前半のパラジウム生産は昨年比2%の減少となり、今年6月頃のあのリースレートの急騰は、現物が足りなくなるとその長期契約の履行に支障が出るノルリスクが現物在庫を積み上げたことが原因かもしれないと思っています。ノルリスクは今年のパラジウム需要は史上最高となり、供給不足は30トン以上になると予測しています。

また、現在の地政学的リスクで、軍事設備の増強が急がれていますが、そこにもパラジウムが使用される部分が多々あります。炭化水素(石油や天然ガスなど)が重要な軍事的燃料となりつつあり、それを利用するためにパラジウムのナノマテリアルが水素の浄化、保存、探索、そして燃料電池に使われるのです。これはまたパラジウムの需要を増加させる大きな要因となってくるでしょう。

このような状況にあって、パラジウムが下がるというシナリオがあるとすれば、

  • 米国の不況で自動車売上が激減すること。
  • パラジウムがプラチナを超えた時に、パラジウムの用途をプラチナに置き換えるという動きが顕著になること。
  • 中国が自動車販売への補助や減税制度を撤廃すること。
  • 長期的にガソリン・ディーゼルの内燃機関自動車から電気自動車や燃料電池車へのスイッチが進むこと。

 などが考えられますが、いずれもすぐにその影響が出るとは考えがたく、パラジウムの供給不足の状況が短期間に解決するとはとうてい考えられません。したがって、まだまだパラジウムの堅調な推移は続くと思われます。