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サウジ石油施設攻撃で原油急騰、生産復旧で鎮静化するのか

9月14日サウジアラビアの石油施設が
ドローン攻撃を受けたことで急騰した原油市場。

※WTI原油価格

WTI原油価格は三角持ち合いをズバッと上抜けしました。
しかしサウジアラビアが月内にも完全復旧すると声明を出したことで急反落。
再び持ち合いの中に叩き落されたように見えます。

ここからのマーケットを見るうえでのポイントは2つ。

①需給 ②地政学

【需給】

今回生産に障害が出るとされたサウジアラビア、
8月の原油生産量は日量985万バレル、世界の10%に相当します。

サウジは世界最大の輸出国でもあり、
日量700万バレルあまりの石油を各国に輸出しています。

今回の攻撃で570万バレルもの生産が停止したと報じられましたので
サウジの輸出が滞るのでは、との懸念が広がったことで
週明け16日月曜、WTI原油が15%もの急騰となりました。
570万バレルは世界供給分の5%に該当します。

しかし、18日にはサウジアラビア政府が月内までに生産量が回復できると
声明をだしたことから、急騰した分の61.8%下落しています。

これは供給懸念が払拭されたことでの下落。
月内に生産が回復できるなら、今度のことは一時的な上昇で終わる?!

そもそもの需給を見てみましょう。

OPEC、20年世界原油需要見通し下方修正 協調減産継続へ
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN1VW23V.html

OPECプラス、来年に向け市場の大幅な供給過剰に直面へ-IEA
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-12/PXPMTU6JIJUO01

OPECプラスが協調減産を継続する中、OPECプラスに対する石油需要は
生産を下回る見込み、ということで世界需給は全くひっ迫していません。
来年に向けて大幅な供給過剰となる予想なのです。

そこへ来て、トランプ大統領がタカ派のボルトン大統領補佐官解任を解任、
イランのロウハニ大統領との会談検討、その際にはイランに課されている
経済制裁(同盟国にイランとの原油取引を禁じていたりします)を緩和する、
という観測によって原油価格はさらに下押し圧力が強まっていました。

世界第2位の原油需要国(世界最大の原油輸入国)である中国の輸入量は、
2019年4月を最後に日量1000万バレルを越えていません。
2010年代に入り毎年日量100万バレル以上のペースで増加していた世界の原油需要が
2019年、今年は100万バレルを下回るとの観測も出ています。
つまり、世界の需要はピークアウトしたようなのです。。。

供給に懸念が生じて急騰した今回の原油価格は
需要の伸びという健全な需給背景があっての上昇ではありません。
つまり、この後、地政学リスクや供給障害が起こらない限り
再びレンジに戻った原油は上値重く推移するということになります。

 

【地政学リスク~供給懸念】

ではこれで本当にサウジアラビアの石油施設攻撃という重大事件による
原油高騰は終焉したのでしょうか。

トレーダーの知人は「原油をショートできなくなった」と話しています。

何があるかわからない、というのです。

原油関係者の多くがサウジの石油施設は鉄壁のセキュリティによって守られ
生産の半分を失うような攻撃にさらされることなどない、と考えていたようです。
現にこれまではそのような事態に陥ったことはなかった。
サウジの軍事費は年間数兆円、アメリカのミサイル防衛網も導入しています。

ところが、報道によればわずか一機160万円のドローン10機による攻撃で
甚大な被害を被ったのです。これに驚いた関係者は少なくありません。

誰がやったのか、という点がフォーカスされていますが
問題は誰が、ではなく、誰でもできちゃう、ということにあると思います。

安価に、正体をさらさずに原油を急騰させ、世界を混乱に陥れることが可能?!
1機160万円のドローン10機で1600万円。
一般市民にだって可能なコストですよ、、、。

直後に隣国イエメンのイスラム教シーア派系フーシ派が犯行声明をだしていますが
フーシ派を支援するイランが深く関与しているとの見方が強まっています。

米国ポンぺオ国務長官はイランの関与に言及していましたが
18日、トランプ大統領も対イラン制裁の強化を発表しています。
48時間以内に発表するとか。

米国による制裁強化でイラン側が黙っているでしょうか。
ドローンによる攻撃はミサイル防衛網をすり抜けることが出来るんです。

攻撃が今回1回で終わるでしょうか。

ということで、今回の件を受けたサウジと米国によるイラン制裁強化が
さらなる対立と、、、新たな攻撃を呼びかねません。

原油とレーダーは原油をショートしにくくなった、というわけね。

もう一度この三角持ち合いを上抜けるような事態があれば
原油高は本物、、、、というか原油高が常態化するかもしれません。