日本フィナンシャルセキュリティーズ

結局レンジの原油相場、上値が重いワケ

ホルムズ海峡封鎖、と聞くと
資源を持たぬ日本人が不安を覚えるのは仕方のないことですが、
足下ではそのようなリスクに警戒する必要はなさそうです。

日本の年間原油輸入量の9割近くが中東産原油で、その9割近くが
ホルムズ海峡を通過して日本に入ってきていますが、
昨年2019年、イランの革命防衛隊がホルムズ海峡で英タンカーを拿捕したり
日本のタンカーなどを攻撃する事件などがありました。
9月にはイランの重要石油施設をドローン攻撃したのもイランだったとされています。

しかし、昨今ではこのような地政学リスクが燻る中にあっても、
原油相場はあまり大きく動きません。

2020年、年明け1月2日には米国がイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を殺害したと発表、
そして1月8日、今度はイラン革命防衛隊が米軍の駐留するイラクの基地に対して
ミサイル攻撃の報復を行ったことなどを受け、
WTI原油価格は66ドル近くまで上昇しましたが、
結局はレンジ上限をテストし反落してしまっています。

※WTI原油価格 結局はレンジ相場の中での推移
WTI


本格的な上昇に繋がらなかった背景には
イランがウクライナ機を誤射、撃墜してしまったことで
イラン国内世論の反発を抑えきれなくなってしまったことで
ソレイマニ司令官殺害で米国憎し、との世論形成に失敗・・・。

米国とイランの本格的な開戦リスクが急激にしぼんでしまったことが
指摘されていますが、仮にこのような展開とならなかったとしても
そもそも原油価格は上がりにくい構造となってしまっているのです。

8日未明、イランの報復を受けてのトランプ大統領の声明に世界の関心が集まりましたが
ここでのトランプ大統領のこの発言が原油価格を大きく下落させました。


「我々は自立した。中東の原油など必要ない」


イランへの追加制裁を表明し、報復の軍事行動はとらない姿勢を示し
本格開戦リスクが後退したことが原油下落をもたらした、という解説も
間違いではありませんが、米国が世界一の産油国となったことで
中東依存度が低下し、地政学的な重要度も薄れたことを示唆したということです。


そもそも、現在、OPECプラスは協調減産を実施しています。
生産できるのにわざわざその量を減らして原油価格を下げさせない、
という政策をとっているということです。

OPECの減産遵守率は高いとされており、日量300万バレルほどの生産余力があるようです。
そして、今や世界1の産油国となった米国のシェールオイルもパーミアン鉱区で
日量100万バレルほどの余力が、そしてロシアなど非OPECも数十万バレルの増産が可能とか。

これらを合計すると、、、
世界には400~500万バレルもの原油の生産余力があるということになります。

そもそもイランは経済制裁中で米国の同盟国はイランとの原油取引が禁じられており
ホルムズ海峡にまでリスクが拡大すれば話しは別ですが
イラン産原油の供給リスクというのは、現在の原油市場には全く材料ではないのです。

これに加えて昨年10月にノルウェーを本拠とする石油ガス大手エクイノールが
北海大型油田「ヨハン・スベルドラップ」を稼働開始。
生産能力は日量44万バレルだそうで、これはノルウェーの生産量の約2割を占めるボリュームです。

こうした新規開発油田の稼働開始はブラジルなどにもあって
30年前のピークオイル説は何だったんだ、、、ってな話ですよ。
完全に産油国のプロパガンダでしたね。

それなのに、次世代自動車はハイブリッド、EV、水素、、、と
技術革新での燃費向上が進んでいます。
どうしたって、原油には余剰感が出てくるわよね。

ということで、よほどの生産障害でもない限り
原油相場はこのレンジ上限を超えることはなさそうです。