日本フィナンシャルセキュリティーズ

WTI原油先物▼40ドル~米英ロックダウンからの限月間スプレッド拡大

 歴史的事象を目の当たりにすることが多い2020年。

なんとWTI原油先物市場で原油価格が一時マイナス40.3ドルを示現。
マイナス300%?!
WTI5月限

原油価格がマイナスになる、ってことがあるんですね。
私もコモディティ市場をウォッチし続け〇〇年、初めて見た価格です。

つまり、原油を買っていた人が
お金を払ってでもいいから売り払いたい、要りません!
という状況に追い込まれたということです。

なぜ?!

この歴史的価格を示現したのは「WTI原油5月限」です。

他の限月は20ドル台での推移、決して堅調な価格推移とは言えませんが
マイナスになるほどの混乱はみられません。

何故5月限だけ?
そこにはこの5月限の決済期限が4月21日であったことが大きくかかわっています。
決済期限のことを納会を呼びます。


まずは簡単に先物市場について。


先物市場では、原油生産者が乱高下する価格変動で経営が追い込まれないように
生産した現物(原油)を先物市場で売るという「ヘッジ」を行っています。
先々、決められた価格で売ることが出来るという契約があることで
経営計画も立てやすくなりますね。

他方、この生産者の売りに対し買いでキャピタルゲインを狙う投機筋も存在します。

もちろん彼らは売りも買いも自由ですが、基本は買い。
先物市場の建玉ポジションを見るとネットロングであることが多い。

これは基本的に、先物市場というのはコンタンゴ(順鞘)となっているため
期近(当限)と呼ばれる中心限月で買って、長期ロールオーバーしていけば
儲かるという構造になっているためですね。

先物価格というのは基本、先高となっています。
簡単に説明すると、現物の保管料がかかるためコストが上乗せされているのです。

1年先の原油価格は1年分のタンカーなどの保管料が乗った価格であるわけで
「生産者ら」は、今掘った原油を高い先物価格で売りヘッジすることで
安定した経営を営んでいるワケです。

ちなみに、先物市場は1か月毎に「限月」が存在しています。
5月限、6月限、7月限、8月限、、、それぞれに取引が成立しています。

※WTI原油先物価格 出来高が大きい限月が「中心限月」となります。
 今はJun20 =2020年6月限になっていますね。
 問題が起きたのは May20=5月限です。

原油先物ロール
 CFDやETFなどは常にこの「中心限月」の価格を指標とするよう自動的に乗り換えられているため
 決済期限がありません。ただし、この中心限月に乗り換える際に価格差があまりに開いていると
 その時点でCFDやETF価格が大きく値が動きますので注意が必要です。
 この乗り換えの作業が「ロールオーバー」です。


ところが、今回のこの限月間の価格差が尋常じゃない拡大をみせました。
前述しましたが、中心限月である期近物の価格が安く、先に行けば行くほど
価格が高くなりコンタンゴ、この価格差が猛烈に広がる「スーパーコンタンゴ」状態になると
何が起きるでしょう。


投機筋らは納会前に、先限にポジションをロールオーバーし続けて長期保有すれば
儲かるはずなのですが、あまりに価格差が広いとロールオーバーにコストが嵩みます。

通常、この限月間のスプレッド(価格差)は数十セントから数ドル程度。
この程度のコストならロールオーバーコストとしても問題ないのですが
納会直前の昨日は、その価格差が最大で60ドルにも広がりました。

5月限がマイナス40ドル、6月限が20ドル台でしたものね。

この価格差が数ドル程度の時にロールしておけばよかったのですが
今回納会期日が近づく前から6~7ドル程度のスプレッドがありました。
このスプレッド拡大は、3月20日辺りから大きくなっていったことがわかります。

※5月限と6月限のWTI原油価格推移
当限と2番限比較

3月20日、、、?!


3月22日にNY州を皮切りに米国が各地でロックダウンに入り
3月23日に英国がロックダウンがスタートしたことは無関係ではなさそうです。

特に3月23日、英国のロックダウン以降、ゴールドの市場にも異変が起こっています。
ロコロンドンの金現物価格とCOMEX先物の金価格のスプレッドが拡大しはじめたのです。

ゴールド市場の異変にはいくつか要因がありますが~
詳しくはこの動画を見てくださいね。

ロンドンとNYで金価格が違う!?
~ゴールドマーケット、異常な乖離を徹底解説~(貴金属スペシャリスト 池水雄一さん)
https://www.youtube.com/watch?v=fpHiU4jelS8&t=129s

同時期に、WTI原油市場の限月間スプレッドの拡大が始まったのは興味深いですね。
要するに、トレーダーらも自宅待機で市場でまともに価格形成で来ていない可能性があるのです。


ということで、1カ月も前から限月間スプレッドが拡大し続けたあまりに
投機筋らはポジションを手仕舞うことが出来ずに期日を迎えてしまったのではないでしょうか。


WTI原油先物の5月限月は4月21日が納会、最終取引日でした。


私も不思議に思っていたのですが、先物市場での投機筋のポジションは
これだけ原油が下げ続けているのに高いままでした。


※WTI原油COTポジション

原油COTポジション
特にOPECプラスの協調減産の合意が決裂した3月から
ネットロングが積み上がっています。
サウジが増産表明し、価格はどんどん下がっていくのに
ネットロングはどんどん積み上がっていきました。

ファンド勢、値ごろで買い向かったんでしょうか・・・。

彼らは基本、中心限月である期近物を取引しているものと思われますが、
この建玉明細は全ての先物取引のポジション総計なので
ロールオーバーされて中心限月となった6月限にも買いポジションが
溜まっている可能性もないことはない・・・。


今週土曜朝に出てくるデーターに注目ですね。


※CFTC建玉明細は その週の火曜時点までのプレーヤーのポジションが
 金曜のNYクローズ後に発表されます。つまり土曜の朝。

ファンドの買いポジションがズドンと減少していればまだいいのですが
ネットロングがあまり減っていないということになると
次の納会でも同様のリスクが。


、、、、というか、すでに中心限月に回った6月限が
今日21日の取引ですでに急落しているんですけど


今日は高値22ドルだったのが、先ほど11ドルまで半値になっています。
納会を待たずに投機筋の手仕舞いがでているということでしょうか。


ちなみに6月限納会は 5月19日。


それまでに急激な需給が引き締まるか
(ロックダウン解除で飛行機が飛びまくり需要が激増する
 =在庫が急激に減少に転じる)

ポジションの整理が行われなければ
(COTポジションのネットロングが整理される)
再びマイナスに沈むリスクがあることに注意してください。
 
ファンドが納会を待たずにポジションを手仕舞い続ければ
ダラダラと価格が下落を続けると思われ、
WTI原油5月限の特殊要因ではないということになってくると
これはやはり株や債券、為替など他市場にも大いに影響を及ぼすと思われます。
ここからは全般リスクオフ相場となるのではないでしょうか…?!


ラジオNIKKEIマーケットトレンドPLUSで
マーケット・エッジ代表の小菅努氏に原油市場の異変について
お話しを伺っています。
こちらも是非参考にされてください。

マーケットトレンドPLUSブログ http://market.radionikkei.jp/trendplus/

小菅氏出演音声オンデマンド http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/trendplus/trendplus-200421.mp3