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ゴールド急落、何故?「金利」が重要なワケ

国内の金価格が40年来の高値を更新したことが連日話題となりましたが

お盆時期の11日~12日、大きな下落を強いられました。

※国内金先物価格 
トコム金下段のチャートは200日移動平均線との価格乖離。
乖離があまり日も拡大したために利食いが入っても不思議はないところまで買い進められてきました。

【国内金価格の算出方法】

そもそも国内の金価格は、ドル建て金価格の変動と為替動向に影響されます。
ドル建て金価格は1トロイオンス(31.1035g)で表示されています。

一方、日本での金価格って「1gいくら」で表示されます。
日本の金価格は「ドル建て価格にドル円の為替を掛けトロイオンスからグラムへ換算」します。

※ドル建て価格20000ドル、米ドル/円が105円なら
「2000ドル×105円÷31.1035g」という計算式になります。

現物を販売する貴金属商はここに手数料等を加算、
国内小売価格が算出されているのです。

しかし、今の為替市場を見ると。。。。

※ドル円

ドル円
小動きでほとんど動きがありません。
先ほどの国内金のチャートと比較してみてください。
200日移動平均線は横ばい。しかもほとんど価格乖離がありません。

通常ドル建て金価格は「ドル安」によって上昇するとされていますが
「ドル安」ということは「円高」でもあるため、円建ての国内金価格は
円高の影響を受けてあまり上がらないとされています。

ところが、昨今のドル/円相場には大きな動きがない中で
ドル建て金価格の値動きが大きいという相場状況が続いているため
ドル円相場の影響をあまり受けていませんね。

【金価格変動に重要な「金利」】

さて、大きな下落を強いられたゴールド。

これまで金が上昇してきた主な要因は・・・

新型コロナウイルス問題は大きく関係しています。

①景気後退不安(終息が見えぬ不安)
②米中対立激化による世界分断不安
③金融緩和政策による過剰流動性
④大規模な財政拡張によるバラマキ

などが上げられますが、これは大局のゴールド強気の材料であって
なぜ突如金が急落したのかはまた別問題。

こちらのチャートをご覧ください。

※ドル建て金価格と米10年債利回り 転換タイミングがわかりやすいように4時間足で比較
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見事に逆相関、転換点が一致していますよね。

ゴールドの価格変動要因は、様々に検証されていますが
もっとも説得力が高いのが「金利」です。

通貨や債券には金利があるが、ゴールドには金利がないためです。

※ただし、ゴールドに金利がないというのは正確ではありません。
ゴールドも通貨同様「リースレート」という貸し借りの際の金利が存在します。

リースレートは「ドルの資金調達コスト(LIBOR)」と「金フォワード・レート(GOFO)」の差で
計算されます。 →LIBOR-GOFO

これが金のリースレートのチャート
https://www.kitco.com/lease.chart.html
金リースレート

2010年以降の推移ですが極所的に2%くらいまでに上昇する局面がありますが
基本的に0~1%程度なので、ほど金利がないとされてきました。

通貨や債券金利と比較すれば低いでしょ。
しかし、現在、主要国の政策金利はほぼゼロに引き下げられ
債券市場でも主要国の長期債利回りはゼロ金利になってしまっています。

つまり、金利がないとされる金のデメリットを考える時代にないということです。

そしてもっと紐解いていくと、金価格は
米国の10年実質金利との相関性が高いとされています。

実質金利とはアメリカ10年金利から消費者物価指数(CPI、総合、前年比)を引いて算出します。
つまり、名目の金利からインフレ率を引くということね。
物価の影響を考えた金利のことです。

コロナ禍の金融緩和で名目金利が引き下げられているのですが
さらに世界中で戦後最大レベルの財政出動が行われている為、
あるれるマネーが通貨の価値を低下させ、物価を上げるのでは・・・と
期待インフレも上がってしまうため、実質金利がみるみる低下しています。

※米実質金利

FRB


この実質金利ですがワールドゴールドカウンシルの古いレポートに
長期相関チャートがありました。
実質金利

※米国の実質金利(米国債3カ月物利回りから米国の総合CPI(消費者物価指数)の上昇率を差し引いて算出)
これは3年物の利回りで算出している実質金利ですが、ほぼ例外なく金の価格上昇とマイナスに低下した実質金利
が相関していることが確認できますね。
逆に実質金利が高い時期は金価格は低迷しています。

ということで、今後の金価格を占ううえでは
実質金利が上昇してこないことが重要になります。

実質金利低下要因が 「名目金利」低下、「期待インフレ」上昇ならば
実質金利上昇要因は ①「名目金利」上昇 ②「期待インフレ」低下となります。

①の名目金利に関しては、市中銀行は中央銀行の政策金利を基に金利を設定しますので
米国でいえばFRBの金融政策に注目ということになりますが
FRBは2022年まで現在のゼロ金利政策を継続するとのスタンスを明らかにしています。

よほど景気が良くなり、インフレが高まらないことには金利を上げるという
政策転換はできないものと思われます。コロナ問題は終息していませんしね。

そして②の期待インフレの低下ですが
これだけ世界が財政出動を強いられる中では上昇傾向が続くと考えられます。
お金があふれれば、お金の価値が低下し相対的に物価が上昇します。

今はコロナウイルス拡大を抑え込もうと人の動きが制限されていますが
これが再開した折には。。。と考える向きも多いでしょう。
消費活動が戻れば、人々は溢れるマネーを使うはずです。

さらに中国との分断による中国発デフレの終焉が懸念されている中
(米国、日本などの製造業の国内回帰による人件費の高騰は起こるでしょう)
期待インフレの低下は起こりにくくなってきているように思います。

ということで、金価格はお盆に激しく売られましたが
短期的には金利が反発したことがトリガー。

今後再び金利が低下するようなら、再び上昇するでしょうし
想定外に金利が大きく上がるようなら、金上昇は終焉となるでしょう。

ちなみに、現在実質金利が下がっているのは米国だけの現象ではありません。

■実質金利、9カ国・地域でマイナス
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61908610U0A720C2EA4000/
20カ国・地域(G20)に加盟する18カ国・地域(独仏伊をユーロ圏として統合)のうち、
政策金利と直近の消費者物価指数(CPI)を基に算出した実質金利をみると、
9カ国・地域でマイナスとなった。
各国実質金利

金の上昇は、金利の低下や財政支出拡大などによる「法定通貨」全般への信認低下なのです。
金価格は金市場の需給要因によるポジション整理の下落があったとしても
まだまだ上昇する環境にあると考えています。