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なぜ下がらぬ原油、アラムコ決算から見える将来不安

原油価格が膠着しています。
ボラティリティも低下、WTI原油は40ドル台で小動きが続きます。

新型コロナウイルスを完全克服しないことには
本格的な原油の需要回復は見込めないのですが
4月に原油価格が急落したことで、中国が原油の買いだめに
走ったことなどから原油価格は下値固く推移してきました。

中国の2020年5月の原油輸入量は前年同月比4797万トンと過去最高を記録。
6月の原油輸入量は前年同月比34.41%増の5318万トンと
5月輸入量をさらに10%あまり上回る量を買い付けました。

どうも原油貯蔵タンクの容量を超えているようで陸揚げが追いつかず、
多数のタンカーが沖待ちしている状況だとか。

となると、中国がこのペースで原油を買い続けるわけがなく
コロナウイルス問題で飛行機が飛ばずジェット燃料消費が見込めない中では
原油価格は上値が重くなってきてもいいはずですが、
下値も固い状況が続いています。

おまけに7月からOPECプラスは協調減産量を縮小しているのですが…。
(つまり増産しているということ)

なぜ原油は底堅いのか。

①なかなか戻らぬ米シェール生産量

米シェール企業の生産コストは平均40~50ドルと試算されています。

まさに今の水準が生産コストギリギリのラインですね。
要するに掘削してもあまり儲からない。

米シェール企業、第2四半期決算は2016年以来の最悪に 原油安で
https://jp.reuters.com/article/usa-shale-preview-idJPKCN24T2Z1

すでにシェール企業の破たんが急増しています。

米石油企業破綻、29社に倍増 生産急減、シェール苦境続く―4~6月
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020070900869&g=int

ということで、シェール企業による生産が伸びてこない。
原油安による経営悪化で資金調達もスムーズではないようです。
となると、設備投資に資金が回らない。

米国のワープスピード計画だけでなく、ロシアもこのほどワクチンを承認した
という報道があったように、世界はコロナ制圧に向けて
熾烈なワクチン開発競争を繰り広げていますが、
もし、有望なワクチンが承認され経済活動が再開すれば
倒産してしまったシェール企業の生産分だけでなく
資金調達できずに設備投資ができていないシェール生産が
需要に追いつくのだろうか。

シェール企業は増産を決断してから実施されるまで、
半年のタイムラグがあるとされています。

②アラムコ決算から見えるサウジアラビアのベネズエラ化?

サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが9日発表した
2020年4~6月期決算は、純利益が246億2千万リヤル(約7千億円)と
前年同期に比べ73%減少しました。

原油安なので予想はできましたが、驚いたのは高額配当の維持。

2019年12月の新規株式公開(IPO)時に約束した年間750億ドル(約8兆円)の
配当計画にもとづき、4~6月に187億5000万ドル支払いを続けると表明。
純利益の3倍近い配当の実施するには蓄えを取り崩すか、
借り入れを増やす必要があり、アラムコの経営に打撃となりますが。

英BPなど国際石油資本(メジャー)は配当引き下げています。

なぜアラムコはこの惨状の中、配当計画を維持したのか?!
今後予定する海外上場に向けて、投資家をつなぎとめる必要があるため、
という解説もありますが、実はアラムコの大株主がサウジ政府なんですね。

サウジアラビアの原油の生産コストは2.8ドルととても低いため
40ドルでも利益は出るのですが、
サウジアラビアの財政均衡コストが80ドルとされているんです。

要するに原油価格が80ドル程度なければ
サウジの国家財政は赤字が続くということ。

今40ドルですよ、財政均衡コストの半分の原油価格では
サウジはやっていけないんです。

ということで、サウジアラビアは7月から
消費税に相当する付加価値税を5%から15%に引き上げました。

要するにお金がない!!

ということで、アラムコの資産を政府が吸い上げているというのが実情。

経済産業研究所の藤和彦氏は
チャベス大統領下でのベネズエラのバラマキ政策を彷彿させると指摘し懸念を示しています。

ラジオNIKKEI マーケットトレンドPLUS
http://market.radionikkei.jp/trendplus/uae.html

チャベス大統領は石油産業の国家管理の強化し
財政貢献の拡大など国家志向的石油政策を強力に推し進めました。
貧困層に対する教育・医療・住宅の無償化など
大衆迎合的なバラマキ政策を実施したのです。

その結果、石油生産設備に資金が回らず
生産設備の老朽化や膨大な債務がベネズエラの原油生産を圧迫し続けています。
実はベネズエラは石油埋蔵量世界一なのに・・・・。

まさかサウジアラビアがベネズエラのようになるとは言いませんが、
アラムコの高額配当維持の裏には、財政難に陥っている政府の赤字の
穴埋めという惨状があり、これはアラムコの設備投資に影響しないか懸念されるのです。

サウジアラビア政府は、この3月、
原油生産能力を日量100万バレル増やし1300万バレルにするように
アラムコに指示していますが、生産能力の増強には数年の年月と
多額の投資が必要なのだそうです。できるんでしょうか?!

というより、現状の1200万バレル生産の維持にも
恒常的な設備投資が必要なんです。。。

ということで、40ドルで常態化した原油価格、これが産油国各国に
及ぼす悪影響が、将来の原油価格を押し上げる可能性がある、というお話しです。

少なくとも、コロナ終息となればジェット燃料需要が回復しますので
40ドル台から大きく原油が崩れるということは考えにくいとも言えますけどね。