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米シェール企業の方針転換で生産量は…

原油

WTI原油価格が60ドル大台まで上昇してきました。
20年にはコロナショックでマイナス40ドルという歴史的安値を示現しましたが、
その後OPECプラスによる協調減産も効いて上昇に転じ、
ワクチン期待も原油価格を更に押し上げているようです。

しかし、原油価格が上昇してくれば価格低迷で採算が合わないことから
生産を停止していたと見られるシェール企業による生産が増え
再び米国産原油の大増産が原油価格の上値を抑えるのでは?!
という懸念があります。本当にそうなのでしょうか。

ラジオNIKKEIマーケット・トレンドPLUSで
エネルギーアナリスト大場紀章氏に伺ったお話が
大変興味深かったのでこちらでも共有します。

音声はこちら
http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/trendplus/trendplus-210216.mp3

米国は2018年原油生産国世界一に輝きました。
シェール革命は石油関連産業従事者を増大させました。

■米国石油産業全体雇用 最大45万人

ところが、2014年からの原油急落時、この雇用は25万人まで減少
立ち直る過程で35万人まで雇用が回復するも、、
コロナショックで再び20万人まで雇用者数は減少しています。

米国はシェール革命によって2018年に純輸出国となりました。
これは輸入より輸出量が大きいということ。
しかしながらそれは2019年11月から2020年4月までのわずか半年だけ。
EIAは2021年以降・米国は再び輸入超となることしています。
コロナ禍、シェール生産にも大きな打撃がありました。
これは戻ってこないのでしょうか?

フラッキングという新しい技術がシェール革命です。
米国の原油生産はこの革命によって急増しました。
しかし、シェール生産がが拡大し続けた背景には
高騰する原油価格があったのです。

高コストであるシェール生産は、原油が高いからこそ
正当化できる新技術で、原油価格が下がってしまうと
途端に生産コストがかさみ赤字になってしまいます。

2014年、原油市場は100ドル台から30ドル割れまでの
大暴落を演じましたが、その際、米石油関連企業は70社も破綻してしまいました。
そしてそらが回復してきたところで今度はコロナショック。
さらにはバイデン政権誕生で米国も脱炭素を掲げました。

石油関連の雇用者数が暴落前に戻らないのにはわけがあります。

これらの危機時、シェール企業は生産効率を高めるために
作業の機械化と無人化に舵を切りました。
特にコロナ禍では、感染リスクを理由に人員のスリム化を急ぐことが
可能となった側面もあるようです。
生産性向上の目標を掲げたからといえども、
労働者の解雇はなかなか簡単ではないのですが、
コロナ禍パンデミックを理由に機械化が進めやすくなったとか。

こうしたシェール企業の事業の転換は急務だったと言えます。

そもそもシェール企業は自転車操業。
シェールオイルの生産を増やす成長モデルで投資を呼び込んできましたが
油価が高値に留まり続けるものでもありません。

債務が大きな企業がは高利回りのジャンク債での
資金調達を強いられてきましたが、2度の暴落を経験し
企業は生産量を拡大する計画から利潤追求型へと転換を進めているのです。

人件費の圧縮で筋肉質となった企業らが生き残っていくわけですが
こうした努力によって、コロナ禍での石油関連企業の倒産件数は
46社にとどまっています。(2014年暴落後は70社)

ここでのポイントは
シェール企業が生産拡大路線から利潤追求型へとシフトしはじめたことで
原油価格が上昇してきても、以前のようにはシェール企業が生産を拡大しない
と考えられるのです。EIAが認めたように米国は純輸出国ではなくなっています。

となると、これまでOPECPLUSがどんなに減産しても
その分をシェールが増産するから意味がない、という議論は成立せず
OPECPLUSが再び生産調整によって
価格をコントロールできるようになってくるかもしれません。
 
OPECPLUS VS 米シェール はOPECPLUSの勝ちとなりそう・・・。

足元で原油が上がり続けるのも、原油価格上昇でシェール生産が
急増していないという側面もあるのでしょう。