日本フィナンシャルセキュリティーズ

コモディティのスーパーサイクルは本物か

本当にインフレはやってくるのでしょうか。

21年に入って、米長期金利が急激に上昇したり、
一部のコモディティが急騰していたりと、
いよいよインフレがやってくるとの声も出始めました。

JPモルガンは過去100年で5度目となる
コモディティのスーパーサイクルが到来した、とレポートしています。

カナダ中央銀行統計局の論文によると過去4回のサイクルは
1回目ピーク1915年
2回目ピーク1949年
3回目ピーク1980年
4回目ピーク2009年 となっているようですが

一つのサイクルが30年程度で一巡してきたようです。
(谷から山が15年、山から谷が15年)
ddda
↑  国際商品に長期高騰説 「スーパーサイクル」指摘も
銅や原油、需要と供給のズレに起因 (日経新聞より)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODJ262H30W1A220C2000000/

JPモルガンのレポートの
4度目となる直近のサイクルは
1996年~2008年リーマンショックまでの12年間の上昇と
2008年~2020年までの12年間の下落で構成されるとか。

そして2021年から5度目のサイクルが始まっているというのです。

これはCRBインデックス。 第4サイクルしか表示されません…。
スーパーサイクル?

5回目が始まっている可能性がある、とはいえ
まだ商品価格指数はコロナ前に戻っだだけですね・・・。

確かに第4サイクルのピークからの上値レジスタンスを
上に抜けていますが、200ヶ月移動平均線は下向きです。


ではどんなコモディティが上昇しているのか。

◆木材 (すべて月足です)
・コロナ禍、米国低金利環境で住宅需要やDIY需要増
・中国でも木材需要増加


◆銅

・中国は世界の銅消費の半分以上を占める
・EVに使う銅の量は従来のガソリン車の3~4倍
・太陽光発電など再生可能エネルギー発電供給網、
 導電部材として従来の発電システムの最大12倍の銅使用
・次世代通信規格「5G」でも銅箔需要増見込み。

・最大の銅生産国チリ、新規投資計画がほとんどなく増産困難


◆大豆

・2018年8月から19年末にASF(アフリカ豚コレラ)が中国各地でまん延、
 飼養頭数が19年1月4億2800万頭⇒0年1月の3億1040万頭へ27%減少したが
 政府支援を受け急回復。⇒豚の飼料用需要が急回復
 (ただしASF発生前の水準にはまだ回復せず)
・米国期末在庫18/19年度9.09億Bu⇒20/21年度1.20億Buに減少見通し
・南米ブラジルで豪雨、アルゼンチン乾燥深刻化二毛作の生産に対する懸念


◆とうもろこし

・米国の期末在庫 3434万・在庫率は10%を下回る
 (10%割れは13~14年以来の低水準)
・米国、今年の作付け面積約9110万エーカーで予想下回る


◆小麦

・中国による旺盛な買い
・米国カナダなどの生産国での悪天候による生産懸念


◆パラジウム

・環境規制強化で触媒としてのパラジウム使用量増
・そもそもプラチナ生産の副産物、供給増が難しい


などなど上昇には「それぞれ」理由があります。

ただし穀物市場に関しては、足元の天候リスクによる生産への懸念は
単年でみれば大きな相場を形成する可能性がありますが
このあと10~15年もの上昇を長期の上昇を想定する
スーパーサイクルを描ける材料ではありません。

来年大豊作となれば問題は解決しちゃいますし
中国の養豚数が病気などで減ることがあれば一気にしぼむ話です。

穀物の価格が切り上がる可能性を秘めるのが
バイデン政権化のクリーンエネルギー政策で
化石燃料からこうしたバイオエネルギーへのスイッチが
具体的に進められれば話は変わりますが
まだその具体策はできていませんので、なんとも・・・。

※現在米国ガソリンは(E10ーエタノール含有10%)が主軸に

バイデン政権でE15になるのでは?という観測jもあるようですが、
どんな政策になるのかには注目ですね。

またスーパーサイクルというなら、今後長期にコモティティ価格が
上昇していくこととなるわけですが、コモディティ先物市場の
イールドを見ると、その可能性はあまり高くないように見えます。

Deepest Backwardation Since ‘07 Shows World Short on Commodities
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-04-30/deepest-backwardation-since-07-shows-world-short-on-commodities

ffffffffffffffffCommodity backwardation rate!!

これは、「逆ざや」が発生しているということです。

逆ザヤというのは、先物市場の期近(現物取引に近い限月)が高く
期先(数ヶ月から数年先の価格まで取引されています)に行けば行くほど
価格が安くなっている価格の鞘のこと。

今、足元の価格は高い価格で取引されているのに、
長い先の価格は高く取引されていないということですから
このあとインフレになるとコモディティ先物市場は見ていないということです。

どういう時に逆ザヤになるかというと、
一時的に供給にリスクが生じた時や
供給を上回るボーナス的な一時的需要が急激に高まった時。

コロナ禍で一時的に供給に障害が生じたコモディティは色々ありましたが、
例えば穀物が今高いのは、中国の養豚数が急回復したための飼料用需要の
拡大だったり(それも養豚数はコロナ前には戻らない)
今年の天候リスクによるものですね。

木材先物などもコロナ禍の低金利とライフスタイルの転換によるもので
これが10数年続くかどうかは疑問です。

というわけで、コモディティのスーパーサイクルという言葉に
踊らされないよう、個別の需給をしっかり分析していく必要がありそうです。

銅に関してはスーパーサイクル入りしているように見えますが
パラジウムは期限付きの上昇という気がしています。
パラジウム上昇に関しては次の機会に!